ハイボールの歴史と語源 邪道な飲み方?名前の由来4説と日本の文化

木のカウンターに置かれた、氷入りのハイボールとウイスキーボトル、ソーダサイフォン ウイスキー

いつもの一杯のハイボール。でも、「ウイスキーを炭酸で割るのは邪道」と言われて、ちょっと気まずい思いをしたことはありませんか。「なぜ“ハイボール”と呼ぶの?」と聞かれても、答えに詰まるかもしれません。結論からいうと、ハイボールは邪道ではなく、100年以上の歴史をもつウイスキーの楽しみ方のひとつです。この記事では、名前の由来の4つの説と、ハイボールが邪道といわれる理由、日本の「角ハイボール」ブームから19世紀のイギリス・アメリカまでの歴史をまとめました。知ってから飲むと、今夜の一杯を胸を張って楽しめるはずです。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

  1. ハイボールの語源は「諸説あり」。有名なのは4つの説
  2. 「ハイボール」の名前の由来4説をくわしく
    1. ① 鉄道の信号説:いちばん有名な「GO」のサイン
    2. ② ゴルフ場説:スコットランドらしい逸話
    3. ③「ボール=グラスの酒」説:言葉としてはいちばん自然
    4. ④ 泡の説:見た目から生まれた名前
  3. ハイボールは邪道な飲み方?答えは「邪道ではなく、楽しみ方のひとつ」
    1. 理由1:100年以上前から続く、正統派の飲み方だから
    2. 理由2:プロも「割って」香りを確かめているから
    3. 理由3:造り手自身がハイボールをすすめているから
    4. 「邪道」といわれる理由も知っておこう
    5. 実はサントリーも、昔は「炭酸で割るな」と言っていた
  4. 日本のハイボール文化の歩み
    1. 大正〜昭和初期:氷なしが当たり前だった「最初のハイボール」
    2. 1950〜60年代:トリスバーと「トリハイ」
    3. 1980年代〜2000年代:ウイスキー冬の時代
    4. 2008年〜:「角ハイボール」で人気が復活
  5. ハイボールはどうやって生まれた?イギリスとアメリカの歴史
    1. ステップ1:もとは「ブランデーのソーダ割り」だった
    2. ステップ2:ブドウの害虫で、ブランデーがウイスキーに
    3. ステップ3:1890年代、アメリカで「ハイボール」の名前が広まる
  6. 歴史を知ったら試したい、今夜の「ひと手間」
    1. 家で作る、氷なしハイボールの手順
  7. まとめ
  8. お酒を楽しむ上でのお願い

ハイボールの語源は「諸説あり」。有名なのは4つの説

ハイボールは、ウイスキーを炭酸水で割った飲み物です。名前の由来には決定的な記録がなく、「諸説あり」が正確な答えになります。

よく知られているのは、次の4つの説です。

  • 鉄道の信号説:「進め」の合図のボールから
  • ゴルフ場説:高く飛んできたボールから
  • 「ボール=グラスの酒」説:背の高いグラスで出す酒だから
  • 泡の説:立ちのぼる炭酸の泡をボールに見立てた

どれが正しいかは決められません。だからこそ、好きな説を1つ選んで楽しめるのが、ハイボールの語源の面白さです。

また、「ハイボールは邪道」という声もありますが、100年以上の歴史をもつ、ウイスキーの正統な楽しみ方のひとつです(このあとくわしく紹介します)。

「ハイボール」の名前の由来4説をくわしく

説 内容 舞台
① 鉄道の信号説 鉄道で、柱に高く掲げたボールが「進め」の合図だった。そこから、「酔いのスタート」をもじって飲み物の名前になった 19世紀のアメリカ
② ゴルフ場説 ウイスキーのソーダ割りを飲んでいたところに、ボールが高々と飛び込んできた。誰かが「ハイボールだ!」と叫んだのが始まり イギリス(スコットランド)のゴルフ場
③ 「ボール=グラスの酒」説 当時「ボール」は、グラス1杯のウイスキーを指す俗語だった。背の高い(ハイ)グラスで出すことから「ハイボール」 イギリス・アイルランド
④ 泡の説 グラスの中で立ちのぼる炭酸の泡を、ボールに見立てた ―

① 鉄道の信号説:いちばん有名な「GO」のサイン

19世紀のアメリカの鉄道では、ボール(玉)を使った信号がありました。ボールを高く上げると「進んでよし」の合図です。

この「ハイボール=出発の合図」が、一日の終わりの「さあ、飲もう」という合図にもじられた、という説です。英語では今でも “highball” に「全速力で走る」という意味があり、鉄道との結びつきを感じさせます。

② ゴルフ場説:スコットランドらしい逸話

サントリーなど国内のメーカー・メディアでもよく紹介される説です。

ゴルフ場のクラブハウスで、当時まだ珍しかったウイスキーのソーダ割りを試していた人のところに、高く打ち上がったボールが飛び込んできた。そこで「ハイボールだ!」と叫んだ、という話です。

③「ボール=グラスの酒」説:言葉としてはいちばん自然

19世紀後半のイギリスやアイルランドでは、「ボール」がグラス1杯のウイスキーを指す俗語として使われていたといわれます。背の高いグラスで出すウイスキーだから「ハイ(高い)ボール」。言葉の成り立ちとしては、いちばんすっきりした説明です。

日本でも「背の高いグラスで飲むから」と説明されることが多いのは、この説に近い考え方です。

④ 泡の説:見た目から生まれた名前

炭酸の泡がグラスの底から次々と上がっていく様子を、ボールに見立てたという説です。細かい泡が立ちのぼる一杯を眺めていると、なんとなく納得できる説かもしれません。

ハイボールは邪道な飲み方?答えは「邪道ではなく、楽しみ方のひとつ」

「いいウイスキーは、ストレートで飲むもの」「炭酸で割るのは邪道」。ウイスキー好きの間では、今でもこんな声を聞くことがあります。

結論からいうと、ハイボールは邪道ではありません。ストレートやロックと並ぶ、ウイスキーの楽しみ方のひとつです。理由は3つあります。

理由1:100年以上前から続く、正統派の飲み方だから

ウイスキーを炭酸で割る飲み方は、19世紀のイギリスで定番になり、1890年代のアメリカで「ハイボール」という名前が広まりました(くわしくは後半で紹介します)。日本でも、大正時代のバーですでに飲まれていました。

最近の流行りものではなく、100年以上の歴史をもつ、れっきとした伝統の飲み方なのです。

理由2:プロも「割って」香りを確かめているから

ウイスキーの味を決めるブレンダー(原酒を組み合わせて味を設計する職人)は、テイスティングのときに水を加えることがあります。ウイスキーと水を1:1で割る「トワイスアップ」は、プロが香りを確かめるための飲み方として知られています。

アルコール度数が下がると、強いアルコールの刺激に隠れていた香りや甘さを感じやすくなるためです。「割る=味を薄めてだめにする」ではなく、割ることで見えてくる香りもあるということ。ハイボールも、炭酸の泡が香りを立ちのぼらせてくれます。

理由3:造り手自身がハイボールをすすめているから

国内のウイスキーメーカーは、自社のウイスキーのおいしい飲み方として、ハイボールを公式に紹介しています。サントリーの「角ハイボール」のように、ハイボールで飲むことを前提に広まった銘柄もあります(くわしくは次の章で紹介します)。

造り手がすすめている以上、「邪道」と遠慮する必要はありません。

「邪道」といわれる理由も知っておこう

一方で、「邪道」という声にも、ウイスキーへの愛情からくる理由があります。

  • 長く熟成させた希少なウイスキーは、繊細な香りをそのまま味わいたい
  • 炭酸や氷で冷やすと、一部の香りや甘みを感じにくくなる
  • 高価なボトルほど、「まずは造り手が瓶詰めしたそのままの姿で」と考える人が多い

実はサントリーも、昔は「炭酸で割るな」と言っていた

「邪道」論争には、意外な歴史もあります。1942年(昭和17年)、サントリーは雑誌『中央公論』の広告で、「炭酸水で割るとウイスキーの持っている深い味が死ぬ」と書き、ストレートか冷たい水で割る飲み方をすすめていました。

そのサントリーが、戦後は「トリハイ」、2008年からは「角ハイボール」で、ハイボールブームを引っぱる側になります(くわしくは次の章で紹介します)。ウイスキーの「正しい飲み方」は、時代とともに変わってきたのです。

どちらが正しいというより、ウイスキーによって、合う飲み方が違うと考えるのがおすすめです。

こんなとき おすすめの飲み方
食事と一緒に、すっきり飲みたい ハイボール
初めて飲むボトルの個性を知りたい まずストレートで一口、次にハイボール
長期熟成・希少なボトルをじっくり味わいたい ストレートや少量の加水

たとえば、初めてのボトルなら最初の一口だけストレートで香りを確かめてから、ハイボールにしてみる。そうすると、同じウイスキーの2つの表情を楽しめます。飲み方に正解はありません。その日の気分や料理に合わせて選べることこそ、ウイスキーの楽しさです。

日本のハイボール文化の歩み

日本のハイボールには、100年以上の歴史があります。大きく4つの時代に分けると、流れがつかみやすくなります。

時代 できごと
大正〜昭和初期 洋酒バーで、氷を入れない「冷やしたウイスキー+冷やした炭酸」のハイボールが飲まれる
1950〜60年代 「トリスバー」が全国に広がり、「トリハイ」(トリスハイボール)が庶民の一杯に
1980年代〜2000年代 1983年ごろをピークに、ウイスキーの消費が長く落ち込む
2008年〜 「角ハイボール」の提案で人気が復活。「とりあえずハイボール」が定着

大正〜昭和初期:氷なしが当たり前だった「最初のハイボール」

1918年(大正7年)に神戸で創業した老舗バー「サンボア」は、今も氷を入れないハイボールを出すことで知られています。

電気冷蔵庫がなかった時代、氷はウイスキーや炭酸を冷やすためのもので、グラスに入れるものではありませんでした。お店の方によると、「昔はどこでもハイボールといえば氷なしだった」そうです。つまり氷なしのハイボールは、日本のハイボールの原点の姿ともいえます。

1950〜60年代:トリスバーと「トリハイ」

戦後の1950年代、サントリーの手頃なウイスキー「トリス」を出す「トリスバー」が、全国の街に広がりました。1960年代のピーク時には、2,000軒ほどあったといわれています。

トリスをソーダで割った「トリハイ」は、高度成長期の会社員が仕事帰りに楽しむ、身近な一杯でした。

1980年代〜2000年代:ウイスキー冬の時代

日本のウイスキー市場は、1983年ごろをピークに縮小していきます。飲み物の好みが多様になり、焼酎ブームなどもあって、ウイスキーは「おじさんのお酒」というイメージになっていきました。

消費量はピーク時の約30万キロリットルから、2008年には約7.4万キロリットルまで落ち込んだとされます。四半世紀近く続いた、長い低迷期でした。

2008年〜:「角ハイボール」で人気が復活

流れを変えたのが、2008年にサントリーが始めた「角瓶」のハイボールの提案です。

  • 居酒屋に、角ハイボール専用のサーバー(「角ハイタワー」)を導入
  • ビールのように、食事と一緒に1杯目から頼めるお酒として提案
  • 2008年の年末には、角ハイボールを扱う飲食店が約1万5,000店に

「ウイスキーは食後にバーで飲むもの」というイメージが、「食事に合う、すっきりした1杯目」に変わりました。こうして「とりあえずハイボール」という言葉が生まれ、若い世代にもウイスキーが広がっていきます。

今では、サントリーが制定した8月10日の「ハイボールの日」(「ハ(8)イ(1)ボール(0)」の語呂合わせ)もあるほど、ハイボールは日本の定番になりました。

ハイボールはどうやって生まれた?イギリスとアメリカの歴史

日本に伝わる前、ハイボールはどこで生まれたのでしょうか。さかのぼると、名前より先に「ウイスキーを炭酸で割る」という飲み方がありました。その背景を3つのステップで見てみましょう。

ステップ1:もとは「ブランデーのソーダ割り」だった

19世紀のイギリスの上流階級では、ブランデー(コニャック)を炭酸水で割る飲み方が好まれていました。1830年代には炭酸水の工業生産が進み、炭酸で割る飲み物が広まりやすい環境が整っていきます。

ステップ2:ブドウの害虫で、ブランデーがウイスキーに

1860年代以降、フランスのブドウ畑は「フィロキセラ」という害虫の被害を受けます。とくに1880年代には被害が深刻になり、ブランデーが手に入りにくくなりました。

そこで代わりに選ばれたのが、スコッチウイスキーです。「スコッチ&ソーダ」が、イギリスの定番の飲み方になっていきました。

ステップ3:1890年代、アメリカで「ハイボール」の名前が広まる

「ハイボール」という名前が一般的になったのは、1890年代のアメリカです。

  • 1894年:アメリカの舞台劇『My Friend From India』に「ハイボール」という言葉が登場(文字として残る、最も古い記録のひとつとされる)
  • 1895年:バーテンダーの本『The Mixicologist』に、「High Ball」というレシピが登場
  • 1900年ごろ:ウイスキーのソーダ割りは、イギリスでもアメリカでも人気の飲み方に

ニューヨークのバーテンダー、パトリック・ギャビン・ダフィーは、「1890年代にアメリカへハイボールを広めたのは自分だ」と、のちに新聞で語っています。ただし、これも本人の証言で、「元祖」を決める決め手にはなっていません。

歴史を知ったら試したい、今夜の「ひと手間」

語源や歴史を知ったら、家でその背景を感じられる一杯を作ってみませんか。おすすめは、原点の「氷なしハイボール」です。

家で作る、氷なしハイボールの手順

  1. ウイスキーとグラスを冷凍庫で、炭酸水を冷蔵庫でしっかり冷やしておく
  2. 冷えたグラスにウイスキーを30ml注ぐ
  3. 炭酸水を、グラスの内側に沿わせるように静かに注ぐ(目安はウイスキー1:炭酸3〜4)
  4. マドラーで混ぜるのは、縦に1回だけ
  5. お好みで、レモンの皮を軽くひねって香りだけ移す(「レモンを入れるのは邪道?」と気にする必要はありません。レモンの香りづけも、ハイボールの定番のひと手間です)

ポイントは、材料を全部しっかり冷やしておくこと。氷が溶けて薄まらないので、ウイスキーの香りと炭酸のキレを最後まで楽しめます。ひと手間の準備が、そのまま味になる飲み方です。

※老舗バーでは、ウイスキーを多めにした濃いめのスタイルで出すお店もあります。家では、ご自身に合った濃さ・量で、ゆっくり楽しんでください。

氷を入れて作る、ふだんのハイボールの基本の手順と比率は、ハイボールの作り方|家でおいしく作る5つの手順と比率でくわしく紹介しています。

氷やグラス、フレーバーでさらに味を変えたい人は、こちらの記事もどうぞ。

ハイボールに使うウイスキーの背景も知りたい人は、こちらから。

まとめ

ハイボールの語源は、鉄道の信号説・ゴルフ場説・「ボール=グラスの酒」説・泡の説など、諸説あります。そして、ハイボールは邪道ではありません。ストレートやロックと並ぶ、ウイスキーの楽しみ方のひとつです。

日本では、大正時代の氷なしハイボールから、トリスバーの「トリハイ」、冬の時代を経て、2008年からの角ハイボールブームへとつながってきました。さらにさかのぼると、飲み方の歴史は、イギリスのブランデーのソーダ割りから始まりました。スコッチ&ソーダを経て、1890年代のアメリカで「ハイボール」の名前が広まります。

いつもの一杯にも、100年以上の物語があります。今夜は、好きな語源の説を1つ思い浮かべながら、冷やしたグラスでゆっくり味わってみてください。

お酒を楽しむ上でのお願い

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 お酒は20歳になってから、節度をもってお楽しみください。飲酒運転は絶対にやめましょう。

※アイキャッチ画像は、Canvaの生成AI機能で作成したイメージ画像です。実在の店舗や商品を撮影したものではありません。

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